帰るの街

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帰るの街

「ここが、新人冒険者にお勧めの!  冒険者がクエストから無事に帰れると言われているカエレルの街——私の冒険も、ここから始まるのね」  そう意気込むエルフの少女は––––  名前を【エリアル】と言い。  今日から––––彼女の冒険者としての新たな生活がスタートする。 「なんとなく平和そうな街で、安心したわ。」  そう独り言を言った矢先…… 「冒険者様!!! 助けて下さい––––火事です! しかも、家の中に子供が1人取り残されています!」 「それは、大変! 案内して、私が助けるわ!」  そして、エリアルは燃え盛る建物へと飛び込んで行った。 * 「……ゲホッ……ゲホッ……子供は、何処?」 「…………だれか……たすけて……」  見ると––––そこには、燃えて崩れた瓦礫の下敷きになった少女の姿が…… 「待ってて、今助けるから!!!」  そして、エリアルは少女の上の瓦礫をどかすと傷と火傷を負った少女を抱き抱えた。  少女の息は、酷く弱く…… 「急いで、この場から助け出さないと助からない……」  しかし、エリアルが入って来た時より炎は強くなり––––水魔法でも使わない限り! 出る事は難しいと思うほど、炎は激しさを増していた。 「私……雷魔法しか使えない––––どうしよう。」 『水魔法が使えれば、この炎の中を駆け抜けて行けるのに……こんな時は、どうすれば!?」  そんな事を考えていると、炎の中から人影が近づいてくるのが分かった。 「助けて––––私、水魔法が使えないの。」 「大丈夫か!? 俺は、水魔法が使える。 すぐに助けに行くゲコ」 『私が入って来た時より! 確実に、炎の勢いは強くなっている。 その中を助けに来るなんて、なんて勇敢な人なのだろう…… きっと、王子様みたいに素敵な人よ。」  少女の夢であるピンチに現れる王子様を想像する。エリアル……  しかし、炎の中から姿を現したのは–––– 全身、緑色のカエルのモンスターだった。 「えっ……!? カエル? しかも、モンスター……!?」 「助けに来た! 君達、もう大丈夫だ!!! 早くここから脱出をしよう。」  エリアルは、とっさに剣を構えた! 「いやッ……ちょっと待て!  僕は、悪いカエルじゃないゲコよ。」 「そのセリフを言って良いのは、スライムだけな。」 「いや、本当に助けに来たんだって…… だから、剣を下ろしてくれゲコ!」 「モンスターなんか、信用出来ない。」 「なら、このバッチを見てくれ! このバッチは、ギルドが俺だけの為に発行してくれた。 特別な冒険者認定バッチだ!!! これで、俺が悪いモンスターじゃないと分かっただろ……」 「いや、私……今日、初めて この街に来たから……知らない。」 「なにぃぃ(ゲコぉぉ)ー……」  すると、煙が強くなり……助けた少女が苦しそうに咳をし出した。 「大丈夫……お姉さんが今助けるから……ゲホッ……ゲホ……」 「大丈夫……君達は、俺が助けるから……ゲコッ……ゲコ……」 「ふざけてるの? 斬るわよ!」 「すまん…すまん……ゲコ。 和ませようと、思って……」 「邪魔だから、何処かに行ってモンスターなんかの相手をしている場合じゃないのーー。」 「でも、君! 水魔法が使えないんだろ……? 俺は、水魔法が使えるゲコ。 ここから君達を助け出せるのは、俺だけゲコー! だから、信じろゲコー!」 「ふざけているのか……真剣なのか分からない頼み方ね……。 でも、分かったは……これだけ必死に頼まれたら、少しくらい信じてあげないと可哀想だものね。 でも、変な事をしたら……すぐに叩き斬るから––––!!!」 「分かっているゲコ! では、これを……」 「えっ!? 何これ……」  ドロドロドロドロ……  そう言って、カエルは口から体液を分泌すると少女とエリアルにぶっかけた。 「オェえぇぇえー……気持ち悪いぃぃ 臭いーー!!! めちゃくちゃ臭い…… あんた何したのよ!?」 「俺の体液を分泌して、お前らをコーティングしたゲコ!」 「何で、そんな事をしてんのよ––––気持ち悪いッ!!! 変な事をしたら、叩き斬るって言ったわよねーー!!! 覚悟しなさい!」 「いやッ……待て待て! 俺の分泌液は、炎を通さない。 だから、そのまま外に脱出をするぞ!!!」 「ふざけんじゃないわよ!  女の子を こんなにヌルヌルして––––この変態ガエル! ただじゃ置かないわ!!!」  そして、エルフの少女は剣を振り上げるとカエルに襲いかかった。  その行動を見るやカエルは、一目散に退散して行った。 「待ちなさい––––! この変態モンスター!!!」  すると、少女を抱えたエルフは炎に巻かれてしまった。 「熱い––––……くない……。 アイツの粘液が炎を通さないって本当だったの……しかも、炎の中なのに息も出来るし…… 苦しくもない……」 「それは、俺の分泌液の中に大量の酸素が含まれていて皮膚から酸素を吸収しているから苦しくないのさ。 いわゆる皮膚呼吸ってやつだゲコ!」 「気持ち悪いッ!!! 殺す!!!」 「うわぁ〜……」  カエルは、説明をやめて逃げ出す。  そんなこんなで、無事に外に出る事が出来た3人は……  外で待っていた人達に、讃えられた。 「女の子を抱えて冒険者様が出て来たぞ!!!」 「おお〜……ありがとうございます。 冒険者様!!!」 「女性なのに、本当に勇気があるわ! さぞランクの高い冒険者様なのでしょう。」 「いえ……私は、この街に来たばかりで––––まだ、冒険者ではないのです。」 「なんと……まだ冒険者でも無いのに、あの炎の中から女の子を無傷で救出するとは…… 君は、きっと素晴らしい冒険者になれるよ。」 「無傷……この子、ひどい火傷を負っていたはずだけど!?」 「俺の分泌液には、火傷に効くアロエ成分が配合されているゲコ。 あの火事の中から3人無事、帰る(カエル)。 カエルだけに––––」  すると、街の人達が…… 「また、お前か!? 邪魔だから、あっちに行け! この、くそモンスター!!!」  カエルは、街の人に嫌われていた。 「なんだか––––彼女達が、濡れていると思ったら……また、お前の仕業か!?」 「気持ち悪いんだよ! カエル野郎!!!」 「あなた、カエルって名前なの?」 「ふッ……君達に、名乗る名前など持ち合わせて居ないぜゲコ!!!」  そう言って、カエルはその場を立ち去った。 * 「いや〜本当に、ありがとうエルフの冒険者様。」 「いや、彼も助けに来てくれたのですけど……」 「アイツは、良いんだ! いつも、しゃしゃり出て来て! 余計な事をするんだ––––気持ち悪いッ。」 「本当に、気持ち悪い……」 「ギルドも何で、あんな奴––––野放しにしておくのか……」 「いや、でも…… この子の傷も彼の粘液で、治ったんですよ。 確かに、気持ちは悪いけど……」 「いや、あんな奴! 庇わなくても良いよ…… 君は、本当に寛大な人格者のようだね。」 「いや、そんな事は……」 『街の人達は、カエルの彼を放っておけと言ったけど…….  でも、無事に助かったのは 彼のお陰……ちゃんとお礼を言わなくては』 「その子は、こっちで預かるよ。 君は、冒険者になるんだろ!  だったら急いで冒険者ギルドに行った方がいい。 この街に、君みたいな冒険者が来てくれた事に感謝するよ。」 「いえ……」  エリアルは、そう言ってお辞儀をすると——冒険者ギルドを探す前に、さっきのカエルを探しに行った。 * 「本当に! あのカエル––––何処に行ったのかしら…… こっちも冒険者ギルドに行くしかないから、忙しいのよ!  でも、あのカエル冒険者って言って言っていたから一緒にギルドに来て貰って紹介してもらえば、手間が省けるから良いけど……」  そんな事を思いながら、歩いていると–––– さっきのカエルを見つける事が出来た。  彼は、今……  テラスのある食堂で、フランスパンにレタスとハムを挟んだサンドイッチで、優雅に朝食をとっていた。 「あのヤロ〜……こっちが必死で探していたのに、優雅にサンドイッチなんか食べやがって––––」  そして、エリアルが話しかけようと近づくと……  カエルのサンドイッチに、ハエが集ってしまった。  すると、カエルの顔からは笑みが消えて 真剣な顔になった。 「何!? ハエに、怒っているの??? それとも……」  カエルは、舌を目にも留まらぬ速さで動かすとハエを食べてしまった。 『うわッ! 虫食べた! キィぃもぉ!!!』  そして、虫を食べたカエルは何とも言えぬ幸福そうな顔をしていた。 「ちょっと、あんた! 気持ち悪いのよ––––」 「えっ!? 何? さっきのエルフか…… なんか用か?」 「何でハエなんか食べているのよ! 気持ち悪いわね––––!!!」 「別に人の勝手だろ! 本能には、逆らえないって事だゲコ。 さっきのお礼なら気にするな––––別に、たいした事じゃないゲコ。 それとも、ただ文句を言いに来たのか?」 「いやッ……そうなのよね。 実は、さっきのお礼を言おうと思って––––そしたら、あんたがハエを食べていたから。 気持ち悪くて、つい……」 「なぁ〜、エルフの女……」 「私は、エルフの女じゃないわよ! エリアルよ––––覚えておきなさい!」 「そうか、それはすまなかった。 エリアル……」 「何よ?」 「このサンドイッチ半分食べてくれない? お腹いっぱいに、なっちゃった。」 「なっちゃった。じゃないわよ! ハエなんか食べてるからお腹いっぱいに、なっちゃうんでしょ––––。 あと、絶対––––嫌よ! 気持ち悪いから。」 「ええ〜……もったいないから。」 「知らないわよ! 残しなさいよ––––。」 「残すと、怒るんだよ。 ここの店の人が……」 「なら、貸して! あそこの野良犬にでもあげてくるわ……」  そうして、エリアルが野良犬にサンドイッチを与えると  カエルの分泌液が付いていたせいか……お腹をすかしたガリガリの野良犬でも、食べなかった。 「…………」  そして、カエルの元へ戻ると 「ダメね。食べなかったわ……」 「ええ〜……じゃー責任持って食べてよ。」 「…………何で、あんなにガリガリの野良犬が食べなかった物を私が食べるしかないのよ––––!!!」  そして、エリアルは手に持ったサンドイッチをカエルの口へと突っ込んだ!!! 「テメーで食え(死ね)!!!」  そして、カエルの唾液でベタベタになった手を拭きながらエリアルは、カエルの前の席に座ると…… 「あなたって、冒険者なのよね?」 「君に、エリアルと言う名前がある様に 俺にだって……」「分かったッ! 名前を教えて」 「俺の名は フロックレングス・ロイドフォージャーダークネスアイシングサンダーボルト・ロッキングダイナミックバースト……」 「フロックね。分かったわ! それで、フロック! あなた冒険者よね?」 「いかにも、俺は魔物でありながら特別な冒険者だが……それが何だって言うんだ? 仲間になりたいのか!? ならば、断る。 お前みたいなチンチクリン仲間にする気は無いケロ。」 「私だって、あんたみたいなチンチクリンの仲間には死んでもなりたく無いわよ。 もう、余計な事は良いから冒険者ギルドを紹介してちょうだい」 「俺様が、チンチクリンだと–––– そして、それが人に物を頼む態度か––––エリアルよ。」 「そうね……でも、あんたこそ。 テーブルに、足を乗せるのをやめなさい! 行儀が悪いし、店の人に怒られるわよ」 「ふッ––––黙れ! 小娘!」  すると、店の人が掃除をしに現れると フロックは、モップで殴られた。 「このカエルが、次やったら出禁にするわよ––––!!!」 「すいません……ゲコ」  フロックは、何故か素直に謝った。  すると、店の人がエリアルに声をかけて来た。 「エルフのお嬢さんは、こんなカエルに何か用でもあるのかい?」 「いえ、私は––––このカエルに冒険者ギルドを紹介して貰おうと思いまして、話をしていただけです。」 「あんた冒険者になるのかい!? だったら早く案内してやりな。カエル––––!」 「はい! ただいま、お連れしようと思っていた所です!!!」 「なんか、私と態度違うわね……」  そうして、2人で冒険者ギルドに向かう事になった。  その間、フロックはブツブツと文句を言っていた。 「……何で、俺がペーペーのお嬢ちゃんを冒険者ギルドまで案内しないと行けないんだ! これでも、俺はBランク+の冒険者だぞ……」 「ねぇ〜! フロック、あんたってBランクの冒険者だったの? 結構凄いじゃない……」 「うるせ〜黙ってついて来い!」  そんな事を話しながら歩いていると、冒険者ギルドについた。 「ここが、冒険者ギルドだ! さっさと入れ––––」  そう言われて中に入ったエリアルの目に飛び込んで来たものは、沢山のテーブルと椅子と混雑する人集り…… 「凄い人の数ね……」 「あっ!? いつも、こんな感じだぞ」 「そう…… 冒険者登録は、何処でするの?」 「正面の受付に、話せば登録してくれる。 行って来いゲコ…… エリアル––––1つ言っておくが、そう簡単に冒険者になれると思うなよ。」 「……冒険者になる為の試練でもあるの?」 「そんな生優しい物ではない……」  そんな話をしながら進むと……  エリアルとフロックが、カウンターに着くまでに沢山の冒険者達がフロックに話しかけて来た。 「おい! カエル––––テーブルが汚れてるから拭いておけ。」 「ただいま、ふさせて頂きます!」 「カエル! こっちに酒を運んで来い!」 「ただいま、お持ちいたします……」 「ねぇ〜……何してんのよ!? 早く案内してよ。」 「うるせ〜! 見て分からねーのか!? 俺は、今––––忙しいんだ。 勝手に行って、登録して来い!」 「何なの、あんた……!?」  そう言われて、エリアルは1人でカウンターの受付へと向かった。  エリアルが近づくと、中にいる綺麗な女性が話をかけて来た。 「私は、冒険者ギルドで受付をさせて頂いております! リサと言います。 本日は、どうなさいましたか?」 「あの、冒険者登録をしたいのですが……」 「冒険者登録ですね。かしこまりました!」  そして、エリアルの冒険者登録がテキパキと勧められて行った。 「種族は、エルフで……雷魔法が使えると…… これで、登録は完了です。 このギルドカードが身分証となりますから、無くさないでください。 初めは、Fランクからスタートですね。 クエストをクリアすると、ランクが上がって行きます。 他に、聞きたい事などはありますか?」 「えっ……もう、登録完了したんですか?」 「ええ……ギルドカードを発行するだけですから、そんなに時間は掛かりませんよ。」 「そうなのですね……」  なら、なんで……あのカエルは、あんな意味深な事を言ったのだろう……?  すると、エリアルは気になったので一つ質問をしてみる事にした。 「あの〜……フロック、いやッ!  あのカエルは––––冒険者ギルドでは、どういった立場になるのですか?」 「ああ、フロックさんですね。 彼は、色々と特別です!」 「色々とは?」 「凄腕の冒険者って事は、間違い無いのですが……なんせモンスターですから苦労なされているのですよ。」 「はぁ〜…………」 「でも、悪いモンスターではないですよ。 私が保証します!」 「もう一つ聞いて良いですか? 何故、彼はギルドの方達にペコペコしているのですか? 私といる時は、かなり横柄な態度を取るのですが……」 「ああ……それは、ギルドの人と言うよりは 人間にですね。 何でも、オタマジャクシの時に人間の子供に虐められたとかで、人間恐怖症で人間が苦手を聞いております。」  それで、性格があんなに捻じ曲がったのね……納得したわ。 「噂をすれば、来ましたよ! フロックさんが……」 「……どうも、いつもお世話になっております。」 「こんにちは、フロックさん…… 無事にエリアルさんの登録、完了しましたよ。」 「それは、それは、忙しい中……大変ありがとうございます。」 「それで、今日のクエストは何になされますか?」 「いつも通り、余ったクエストで良いですよ。」 「……ならば、エリアルさんの教育係なんてクエストはどうでしょう?」 「えっ!? この女の教育係……嫌です。」 「新人冒険者には、親切にしないと行けませんよ。フロックさん……」 「はい、やらせて頂きます!」 「わぁ〜ありがとうございます。」 「あの〜勝手に、話進めてますけど……私の意見は聞かないのですか?」 「ああ、新人冒険者の初クエストの護衛を頼むのは、いつもの事なのです。 もし、お邪魔でしたら影ならが護衛をさせますが……どうなさいますか?」 「どうせくるなら、一緒でいいです。」  そうして、2人でエリアルの初クエストに向かう事になった。 「最初のクエストは、森の中の薬草採取ね。 こんな簡単なクエストに護衛なんて必要ないのに……」 「バカだなチンチクリンのエルフの女よ! この森は、危険な魔物が沢山生息しているんだーー薬草採取だからって、舐めてかかると怪我をするぞ!」 「そうなのね。 だから、護衛を…… 所で、フロック––––あんた、人間は怖いのに エルフの私は、怖くないの?」 「何言ってんだ? お前……??? 何で、人間が苦手だからってエルフも苦手になるんだ?」 「いやッ、だって……見た目だって、そんなに変わらないでしょ!?」 「いや、変わるだろ! 耳とか長いし。」 「いやいや、耳くらいでしょ? 人間とそんなに変わらないと思うんだけどなぁ〜……」 「いや、俺の恐怖は体の奥底から湧き上がってくるものだ。 この感覚は、説明出来ない! それに、勘違いするな! 俺は人間が苦手だが本当に恐怖しているのは、リサ……いや、人間子供だ!」 「……ああ、だから火事の時––––女の子を私に抱かせていたのね。 なるほどね〜……」  すると、森の奥から悲鳴が聞こえて来た! 「きゃーー〜!!! 誰か助けてー!!!」  それを聞いたフロックの顔が、一瞬鋭くなると…… 「行くぞ! エリアル……」  一瞬で加速をしてエリアルを置いて行った。 「ちょっと、待って––––!!!」  舌を伸ばし、その収縮により森を自由自在に飛び回る姿は……  まるで、調査兵団のリヴ○イ兵士長の姿と重なった…… 「早い……何て––––自由に飛ぶ人なの!」  そして、エリアルが追いついた時にはフロックは、リーゼントベアーと睨み合っていた……  周りには、さっき悲鳴を上げたであろう冒険者達が血だらけで倒れていた。  その姿を見てエリアルは…… 『この冒険者達は、もう助からない。』  そう悟った。  しかし、フロックは大量の分泌液を吐き出すと––––その液体で冒険者達を覆った。  それは、まるで——巨大なスライムに飲み込まれた人……  そんな風にエリアルの目には、映っていた。  そして、液体の中に閉じ込められた冒険者達は呼吸が出来ないのか、液体の中でもがき苦しんでいたが……すぐに白目をむいて、ピクリとも動かなくなった。 「……えっ!? これ、大丈夫なの? フロック! これ、大丈夫なのよね!? この液体で死んだら、あんたが殺した事になるわよ!!!」 「大丈夫だよ! 普通に…… 有名な治療方法じゃないの?」 「私は、知らないわよ! こんな治療方法!」 「えっ!? ドラゴンボ○ルのサイ○人が、こんな感じで傷を治していたじゃないか!?」 「何それ!? 私は、知らないわよ!」 「有名だよ!」 「私は知らないって、いってるでしょ!!! これ以上は、やめて––––その話!」 「オッケー! リーゼントベアーに全集中する。」 「勝てるの……? フロック……」 「やってみなきゃ……分からない。」  リーゼントベアーは、とても気性の荒い魔物で仲間同士でも目が合っただけで喧嘩になってしまうくらい、獰猛な魔物である。  そんなリーゼントベアーにフロックは、メンチを切っていた。 「……何してんの? フロック!?」 「今、大事ところだから話しかけないで……」  そして、その沈黙に耐えきれなくなったリーゼントベアーがフロックに襲いかかった。  リーゼントベアーの鋭い爪が、フロックを襲う。  フロックの体は、見るも無惨な姿に変えられてしまった。 「フロック––––––!!!」  すると、リーゼントベアーの背後に現れたフロックが…… 「それは残像だ!!!」 「凄い……あの攻撃を避けたの!?」  そして、エリアルの隣へと飛んで来たフロックの脇腹は、大きく裂けていて…… そこからは、大量の出血が流れていた。 「えッ……くらったの?」 「少し、かすった……グハッ…………後は、頼んだ! エリアル……」 「私には、あんなモンスター無理よ!」 「心配するな! 俺の硬質化の粘液で、あいつの手足はーーもう動かない。」 「それなら…… でも、アイツ––––手足をぺろぺろ舐めて、普通に歩いているわよ。」 「…………くそぉおぉー! 硬質化と甘い蜜の粘液を間違えた!!!」 「何してんのよ! あんた––––!!!」 「すまーーーン!」 「もういい……だったら、私の有りったけの魔力をぶち込んでやるわ!!! 喰らえぇぇ––––サンダーボルト!!!」 バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ…… 「グガァアァァアーーーー!!!」  リーゼントベアーは、悲鳴を上げると––––煙を上げて地面に倒れた。  すると、自分で傷を癒したフロックが 拍手をしながらエリアルに、近づいて来た! パチ…パチ…パチ…パチッ…… 「合格だ! エリアル……」 「何? 私は、何かを試されていたの?」 「いや、別に……意味深な雰囲気を醸し出してみた。」 「いらない……そう言うの。」 「一旦、街に戻るか…… コイツらの事も運ばないと行けないし。」 「そうね。 でも、この人数どうやって運ぶの?」  すると、フロックは冒険者達を丸呑みし始めた。 「グロ……何してるの!? 人間なんて、食べちゃダメよ!!!」 「ああ……これは、いったん胃袋に……入れてるだけだ…………街に着いたら、吐き出す。」  そうして、ブクブクに太ったフロックと街に戻った。  フロックは、冒険者ギルドの前で冒険者達を吐き出すと水魔法を使い綺麗に洗った。 「ねぇ……水魔法を指先から出すのは、分かるんだけど––––何で、ピストルみたいにした手を股間に持っていくの? 水をかけられてる方は、不愉快よ……」 「これは、放水に負けない様に 力を入れて構えてるだけだ! 体制なんてどうでもいいだろ……」  すると、綺麗に洗われた冒険者達が目を覚ました。 「うわぁッ! 汚い––––テメー何しやがる!」 「最悪……もう、お嫁に行けない……」 「何で!? お前は、いつも嫌がらせをするんだ!!!」  股間からの放水に、怒る冒険者達をエリアルが宥める。 「あなた達も助けられたのだから、少しは感謝しなさいよ。」 「何いってるんだ!? お前…… こんな奴に助けなんて、頼んでない!」 『まぁ、確かに––––フロックに助けを求めた訳では無いけど……彼が助けなかったら、この人達は間違いなく死んでいたのに、感謝の一つもないの?』 「あなた達……」 「もういい。行こうぜ!」  そして、冒険者達は去っていった。 「ねぇ〜……あんたも、もう少し助けた事をちゃんと説明した方が良いわよ。」 「何で?」 「何でって…… だって、せっかく助けたのに––––あの態度は、ちょっと無いと思うゎ。」 「何で? 別に、俺は感謝して貰う為に助けてる訳じゃないし––––興味がない。」 「なら、感謝もされないのに何で助けるのよ」 「困ってる人を助けるのに、理由なんているのか?」 「……でも、そんなのって……悲しすぎるじゃない」 「俺は、勇者だ! 勇者は、皆んなを守る。」 「魔物なのに、勇者……?」 「ああ、そんな事は––––どうでもいいから、お前の初クエストの報告に行こうケロ。」  すると、今朝助けた女の子が走って来た。 「あれ! 君は……」 「お姉ちゃん……助けてくれて、ありがとう!」  少女は、ペコリと頭を下げるとエリアルにお礼を言った。 「元気になって良かった。でもね、あなたを助けたのは、お姉さんだけじゃないのよ。 このカエルさんも一緒に、あなたを助けたの。あなたの傷を治したのも、カエルさんなのよ」 「そうだったんだ……ありがとう! カエルさん」  そう言われたフロックは、とても嬉しそうに微笑んでいた。 「なんだ、興味がないとか言っても––––結局、嬉しいんじゃない。」 「ふんッ……俺も、勇者として––––それ相応の対応をしないといけないからな。 どういたしまして、お嬢ちゃん……」  そう言って、フロックは少女の頭を撫でると…… ベト〜〜…… 「……えっ………なんか、ドロドロする…… せっかくママが結んでくれた髪が…… うわぁあぁぁーーー……」  頭に、ベトベトの体液がついた少女は––––泣き出してしまった。 「これは、まずい事した。 待っていろ! 今、洗い流してやる……」 「ちょっ……やめなさい……」  すると、フロックは––––ピストルの形にした手を股間に持っていくと……少女を洗い流した。 「…………カエルさんが、オシッコかけて来たーーー!!! うぇぇえぇぇぇーーーん!」  少女は、もっと泣き出した。  すると、騒ぎを聞きつけて来た大人達が––––フロックをボコボコした。 「なんで……俺は、俺はーー!!!」 「あんた……余計な事しない方が良いわよ」 _________________________________________ あとがき とりあえず、一話書き終えたので投稿します! 私は、ずっと突拍子もない主人公を考えていました。 人→スライム→蜘蛛→おじさん→剣→自動販売機、ゴブリン、その他…… そして、次はカエルです。 キモさとカッコよさを持った! 私の中では、最高の主人公を見つけたつもりです。✌︎('ω')✌︎
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