2 属性 昭和の熱血教師

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2 属性 昭和の熱血教師

 目が覚めたら、最悪だった。 「う~、飲みすぎた」 「そうですね。昨日は大変でした」  すぐ横から声が聞こえて、オレはぎょっとして体を起こした。  上半身裸の男がいる。 「え? だ、誰?」  昨夜は一人で店を出たはずだけど、どっかでナンパした? 酔ったはずみで持ち帰ったのか?  あわてて記憶を確認していると、男がいくらかさみしそうに言った。 「忘れてますか? 理想の攻め様として私を選んでくれたでしょう?」  男の言葉で、一気に昨夜の夢を思い出した。ていうか。 「夢じゃなかったのか」 「思い出してくれました? ところで、今日は休日ですか?」 「え? ああ、うん。日曜だし」 「では、そろそろ起きましょうか」  時計を見れば、まだ朝の八時だ。 「いや、もう少し寝る。二日酔いで気分悪いし」 「そんな時こそ早起きして動いたほうが早く酒が抜けますよ。根性入れて起きてしまいましょう」 「いやいやいや」  なんだ、根性って。 「休日にだらだら過ごすなんてもったいない。梅干しはありますか?」 「は? 梅干し? 冷蔵庫にあると思うけど」  頂き物を母親が送ってきたのが残っているはずだ。  攻め様は身軽に起き上がり、キッチンへ行ったようだ。上半身裸どころかパンツ一枚だ。  あわてて自分の体をチェックしたが、服も着ているしエッチしたような痕跡はない。  ベッドに寝転んで頭痛をこらえていると、攻め様がパンツ一枚で堂々とマグカップを持って戻ってきた。顔も好みだし、細身だけどうっすらと腹筋が割れていていい感じだ。 「二日酔いにはこれが効きます」  熱々のほうじ茶の中に梅干しが入っている。 「わざわざ作ってくれたの? ありがと」  べつに欲しくなかったけど、せっかく作ってくれたから飲んでみた。 「え、うま」 「頭がすっきりして気合いが入るでしょう?」  攻め様はにっこり笑う。まずいな。好みの顔だからドキドキしてしまう。ていうか、気合いって何だよ。 「ところで、どうしてそんなカッコなの?」 「オーナーが酔って吐いたので」  オーナーってオレだよな? 「え、まじで? それはごめん。とりあえずこれ着てて」  あわててTシャツとハーフパンツを渡すと攻め様は素直にそれを着た。 「ありがとう、オーナー」 「その呼び方、どうにかならない?」 「では何と呼べばいいですか?」 「普通にセナでいいけど。えーと、攻め様の名前は?」 「ありません。名前はオーナーにつけていただくものなので」 「そうなの?」  攻め様は待てをされた犬のようにわくわくした雰囲気でオレの言葉を待っている。その様子を見ていたら、すっと浮かんだ名前があった。 「ええと、じゃあ、あきら」  実家で飼っていた犬の名前だ。 「わかりました。では、セナ、これからどうしますか?」  それはこっちが訊きたい。
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