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1人の女性は悩んでいました。
「知らん」
「ほっておけ」
「俺に構うな」
「向こうへ行け」
「近づくな」
「余計なことはせんでいい」
「どうでもいい」
夫の、数々のこの暴言たちに。
夫はもう私を愛していないのだろうか?
暴力はないものの、毎日浴びせられる暴言たちに女性は限界を迎えていました。
(そもそも、一度私を激しく抱いてから彼は一度も私に触れてこない)
もうあんな熱い夜は半年も訪れていない。
夫は仕事ばかり行っている。
最早仕事しか愛していないと言っても過言ではない。
もう私は愛されていないのだろうか。
結婚してよかったのだろうか。
悩んでいた女性は、精神的に参ったためでしょう。
不眠症になってしまい、眠るための体力を削るためにとふらふらと夜の散歩に出かけることが増えました。
そんな、ある日のことです。
1人のおじいさんがチカチカと点滅する電灯の下で1人佇むのを見つけました。
一瞬幽霊が見えてしまったのかと女性は思いましたが、それはそれでいいや、と思った女性は「こんばんは」と無意識のうちに声をかけていました。
すると、そのおじいさんは女性の方を見ると、にこやかに微笑みました。
とてもやさしそうで、笑い皺がはっきりと見える顔をしたおじいさんでした。その笑顔にどこか心が温かくなるのを感じた女性は、無意識のうちに笑い返していました。
すると、おじいさんは握りしめた片手を女性に向けて差し出しました。
「愛があったら変化がある。なければ変化はない。見えるのはおぬしだけ。1日しか見れない。よく見ておくように」
「え?」
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