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 その日は様子が違った。ルーシーはホテルに入ってきた時から酷く酔っていて、首が据わっていなかった。 「何かやってきたろ」  俺が訊いても、虚ろな眼は宙をふらふらするだけだった。そしてすぐに、俺の身体にむしゃぶり付いて来て服を脱がせ始める。その時に一度、シャワーでも浴びさせておくべきだったのかもしれない。 「しよう、しよう」  粘ついた声でうわ言のようにそう言う彼女の誘いに、俺は抗えなかった。気持ちよりも先に、身体が反応したのだ。ルーシーの身体の動き、指の動きは男のそれの為にあるように蠢き、絡め取っていく。全身を蟻が這っているように感じる時があった。とんでもない女と知り合ったのだと、少し怯えのようなものを感じていたのも確かだ。  のしかかられていい様に動かれている間、俺はルーシーの少し垂れてしまった乳房を下から揉みしだいていた。乳房の先を刺激してやると、妙な声をあげてルーシーが言った。「絞めて。絞めて」  彼女が頽れるようにへたり込んだ所で、俺は身体を入れ替えて、白い尻を抱え上げさせて後ろから繋がった。ひっ、とまたルーシーが声を上げた。俺はそのまま腰を動かして、長い銀髪のような髪を引っ掴んで上を向かせ、彼女の頸動脈の辺りを微妙にずらしながら押し込んだ。完全に絞めてしまえば、そのままあの世逝きだ。あくまで圧迫させて失神に近い状態に持っていく、それが約束だった。  だがこの夜は違った。明らかにおかしな様子だった彼女をそのまま抱くのは、間違いだった。  喘息の患者が息を吸うような声の音に続いて、ルーシーの身体が反り返って硬直した。そして、突っ伏した。一切の動きが無くなった。ぐっと締めこまれて、俺は抜くのに苦労した。避妊具を股間につけた間抜けな状態で、俺は動かなくなったルーシーを何度も揺すった。頬を叩いた。ぐらぐらと頭だけが動いた。瞳は開きっぱなしで瞳孔が開いた状態になっていた。  ルーシーは死んでいた。恐らく心臓発作かなんかだろう。最近危ない薬を使っているような話をしていた。やめろという義理は俺には無かった。どこか、どうせ死ぬも生きるもこの女の人生だ、と思ってた所が俺にはあった。だが目の前で死なれては話は別だった。
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