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「なにこれ」
思わずそう口をついて出た。
近くにいる人も私と同じことを言った。遠くにいる人も口の形でそう言った。町中にたくさんの「なにこれ」が浮いて漂っている。
私は目を閉じて、開いて、目の前の景色を改めてよく見る。
校門から先の光景。そこは私の知ってる通学路じゃなかった。
コンクリートの道路は先が見えないほどにぐにゃぐにゃと曲がりくねっている。まるで道路を無理矢理引っ張って伸ばされて畳まれたようだった。適当にまとめた電気コードみたいだ。
町にいる全員がその現象に困惑していた。
そりゃそうだ。朝に登校したときは平坦で一直線だった道路も、放課後になったら起伏と曲線だらけになってるなんて思うわけないし。
「はあ」
一瞬で様変わりしてしまった町にため息をつくことしかできなかった。近くにいる人も遠くにいる人も同じようだった。
たくさんの「はあ」が迷路のような町に吸い込まれていく。
どうしよう。
とは思っても普通の女子高生にできることなんかあんまりない。
「帰ろ」
校門から出たらすぐに上り坂だった。
こんなんじゃなかったのに。もうひとつ「はあ」が追加される。
畳まれたビニール傘を握りなおして、つま先に力を込めた。
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