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町が大変なことになっている。しばらく歩いてわかったのはそれだけだった。
道沿いに立ち並んでいた店は道路の起伏によって傾き、棚が倒れて商品が散らばっている。
よく行くコンビニの素敵な笑顔のバイトさんも今は店の外で呆然と立ち尽くしていた。
「いつまでたっても家に着く気がしないね」
「あれ、絵美。部活は?」
「あのね茉理。今は町がこんななってるのに普通に部活やってたらダメな時代なの」
急に隣に現れた絵美はひとつ笑った。
彼女は中学校からの友達で家も近い。今は部活の関係で帰る時間が合わないが、昔はよく一緒に帰っていた。
「それよりさ、この道めっちゃ伸びてない?」
「それね。五年目のセーターの袖くらい伸びてる」
「物持ちいいね。てかあの本屋ってさ」
「あ、やっぱそう?」
現実を受け止めきれず見ないふりをしていたが、やっぱりあれは野蒜書店だ。
普段は学校から徒歩五分程度の距離にある小さな本屋だが、私が校門を出てからすでに数十分が経っている。いやどんだけ伸びてんのよ。
ぐねぐね道での事故を恐れて車も動かずもちろんバスも運行していない。なんて果てしない下校だ。
しかも道が波打っているせいで常に坂道の上下を繰り返していて普通にきつい。下校って言うなら下り坂ばかりでよかったのに。
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