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「果てしないねえ」 「どんくらい歩いたっけ」 「二億光年くらい?」 「足の爪滅びそう」  私は右手にレモンスカッシュ、左手におしるこを持ったまま途方に暮れていた。  結局買い直したレモンスカッシュを一口飲む。しゅわっとしたが気持ちはリセットできない。  自販機はもう私たちの前にはいなかった。  あれから速度を上げた自販機はあっという間に見えなくなり、代わりに私たちの後ろから追いついてきたのは野蒜書店だった。 「伸びてるよね、この道」 「十二年目のセーターくらいね」 「もう命宿るんじゃない」  隣の絵美はなんとか笑おうとしてうまく笑えていなかった。  どうやらこの道は人だけを残して今も伸び続けているようだ。  それに気付いた私たちは慌てて歩くスピードを上げた。道が伸びる速度より遅ければいつまで経っても前に進めない。ランニングマシンのように後ろへ置いていかれるだけだ。  先程の自販機に辿り着くころには二人ともレモンスカッシュは飲み干していた。 「二本目買う?」 「また本屋に追いつかれちゃうよ」  ここで立ち止まってしまえば今までの努力が水の泡になる。私たちは自販機を越えて歩みを進めた。  見慣れたはずの下校路が歪んでいる。その歪みの上を、息を切らしながら進んでいく。 「なんでこんなことになったんだろ」 「地球温暖化かな」 「大体のことは温暖化のせいよね」 「でもちょうど高校の下校時刻にこんなことになるって最悪だよね。わたしたちを家に帰らせたくないみたい」  絵美の言葉が頭の片隅に引っかかった。  そしてその引っかかりは釣り針のごとく私の記憶を突き刺して引きずり出す。  まさか、あれのせいじゃないよね。
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