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──今朝、お母さんとケンカした。
原因はささいなことだった。
たまたま寝覚めが悪くて、外は雨が降ってたし、学校にはまだ全然間に合う時間なのに「早く起きて準備しなさい」なんて言うから「うるさいな」って言い返しちゃった。
「何その言い方」
「うるさいからうるさいって言ったの」
そんな風に言い合いになって、私はうんざりしながら家を出た。
いつもは言ってる「いってきます」も言わなかった。
『いってきます』と『ただいま』はセットだ。
どれだけケンカしてもどうせまた帰ってくるんでしょと思われるのが嫌だった。
今日はまっすぐ帰らない。うんと遅く帰って心配させてやる。
絶対に、まっすぐ帰らない。
「……いやいや」
私は首を振る。
なわけないじゃん。しがない一人の女子高生の怒りが道路を伸ばすとかそんなそんな。
まっすぐ帰らないとは思ったけど、うねうね帰るって意味じゃないしね?
学校からうちの家が遠ざかる向きに道が伸びてる気がしないでもないけどただの偶然だしね?
いやいやないない。あるわけない。たまたまタイミングが合っただけ。
「どうしたの茉理」
「ちょっと女子高生の可能性について考えてたの」
「JKは無限大だよ」
何度も坂を上っているからか、絵美は息を少し乱しながらそう言った。顔にも隠し切れない疲れが見える。
なんだか申し訳ない気持ちになりそうになったが、だから私のせいじゃないって、とまた小さく首を振った。
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