除霊師と焦る地縛霊

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「あぁ……もう、ボンっ……あんたのその口許で飛び付かないで。怖いんだからぁぁ……いつまでも慣れないのよぉぉぉ!」  血まみれの顔で彼女はキャットフードを取りだし、お皿に出した。飛びかかる猫又ボン。勢い良く貪るように食べるが相変わらず、舌を咬み血が噴き出す。  ──いい加減食べ方覚えなさいよぉぉ! ──   「彼女さん……早く早く早くテレビを付けて!! ドラマが始まっちゃう!! 彼氏さん、昨日からゲーム徹夜で起きなくて爆睡しちゃって……起きないのよ!! 私の声なんて完全無視だし!! 始まっちゃう、始まっちゃう!!! 早く!!」  女は物に触れないからスイッチが押せないのだ。ちなみに女が興味あるものは最近、隣に全部移した。テレビに漫画にゲーム機にその他もろもろ。彼氏さんがテレビ見たり漫画読んだり、ゲームするときは大人しく隣で目を輝かせて……瞳ないけど、手に汗握って見てる。もちろん彼氏は全く気づいてない。女の存在に……。  よく天の声から女がいること、彼氏に伝えたらって言われるんだけどねぇ……。 「気のせいだよ」  呑気なこの一言で彼氏さんからは片付けられるのよ。 「はいはい」  テレビを付けると大人しく正座してドラマに釘付けの女。もう最近、神経麻痺してる。まだまともに女の顔は見れないんだけどね。怖いから……。  ボンは食べ終えたのか、また私に飛びかかって来た。どうしても私の膝の上がお気に入りなのか、膝の上で丸まりゴロゴロ喉を鳴らしてお昼寝タイム。 「はて、さっきの霊媒師は何しにきたのだろう? まぁいいか……」  血まみれの口許のボンを膝の上に乗せ、私は優雅に紅茶を啜った……。 〈了〉
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