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冷蔵庫からコンニチワ
ヤバい寝すぎたと、デスクに突っ伏していた両腕の枕から顔を上げて涎を拭う。眼前のディスプレイはAM2:10の表示。ちょっと15分だけのつもりが2時間近く経っていた。
ひとまずノートパソコンの画面に立ち上がっている『営業日報』に入力の続きを行う。あとは本社に送信をして、終了。ものの数分とかからない作業であったが、これすら完遂できないほどの睡魔に襲われていた。やっばいな、と何度目かの嘆息。
いつものことであるが、ここ数日長時間労働が続いていた。特に今日は日曜日ということもあって、どこからこれだけの民が集まってくるのか、と思うほどに忙しかった。加えてアルバイト2名が急遽の欠勤。てんやわんやでやっと営業が終わり、俺はくたびれ果てていた。
幹線道路に面した『ド丼がDON!』という名のチェーンのどんぶり屋。そこで俺は店長に抜擢された。立地が良いお陰か連日盛況である。しかし赴任した初月こそ意気揚々と動いていた自分も、予想以上の激務に早くも音を上げつつある。
いたたた、と寝違えた首をさすって厨房にでる。煌々と明りが灯ったままだ。ラスト組メンバーのアルバイト達が帰って行った記憶がない。その時はすでに船を漕いでいたようだ。電気がつけっぱなし、ガス栓も開いたまま、裏口の扉も施錠されていない。いつものことだが、今度厳しく指導しないといかんなと呟く。
厨房をぐるりと回って店締めの点検をしていた俺は、バックヤードの大型冷蔵庫の扉が開きっぱなしであることに気づいた。一瞬ヒヤッとしたのは、中の食材がイカれてしまったかもしれないと思ったからだ。しかし待て。さっきここを通った時は確か扉は閉まっていたはずだ。
扉が馬鹿になったのかと豪快に開いた扉に手をかけた途端、冷蔵庫の中から突然でかい黒猫のようなヤツが飛び出してきた。
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