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ミレーネは封筒から杖の形の紙を封筒から引っ張り出そうとして、恐る恐る指先で紙に触れた。
途端に指先がビリッと痺れ、ミレーネは悲鳴を上げて封筒をテーブルに放った。
「なにこれ? 指にショックを受けたわ。お母さま、触っちゃだめよ」
「あら、宮廷のお抱え魔術師や他の魔術師が害はないと保証しているのに、ミレーネは私の好意のプレゼントを疑うの?」
拗ねた口調のメルシアが、顎を引いて上目遣いでミレーネを見る。ミレーネは言葉に詰まり、助けを求めて母へと視線を移した。
「これはゆりかごね。メルシアは私に子供が授かるように頼んでくれたの?」
「はい。王妃殿下。ミレーネは心優しく繊細な女の子です。絹糸のような銀色の髪も、煌めくエメラルドのような瞳も、王妃殿下譲りでとても美しいと諸侯の殿方から評判で、求婚の打診が相次いでいると母から聞きました。隣国のトリスタナ王国からも招待状が届いているとか」
寝耳に水とは、まさしくこのことを言うのだろう。ミレーネは自分の胸を指で指し、婚約って、私が? とうろたえた。
「王妃殿下を前にして、こんなことを話していいものか迷いましたが、ミレーネのために申し上げます。小さなころからミレーネをずっと妹のように思っている私には、ミレーネの純粋さや守ってあげたくなるようなか弱さは、政治に巻き込まれた途端に壊れてしまうのではないかと不安なのです」
「そうね。魔力があれば身を守ることも可能でしょうけれど、ミレーネは普通の少女だわ。親としてはミレーネを大切にしてくださる方に嫁いで、添い遂げてほしい。ミレーネのために、この幸福のお守りを試してみましょう。どうすればいいの?」
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