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 翌日の早朝、王宮はハチの巣を突いたような大騒ぎになった。  アイリスの叫び声が聞こえた気がして、眠っていたミレーネは瞼をこじ開けようとしたが、眠気には勝てず再び意識が沈んでいく。  突然「ドクターを呼べ!」と叫びながら廊下を走る男たちの声がはっきり聞こえ、眠気が吹き飛んだミレーネはベッドの上に飛び起きた。  すぐに廊下に飛び出し、右往左往していた一人の侍女を呼び止めて何が起きたのかを尋ねる。  すると、フロリア王妃が腹痛を訴えて苦しんでいるという。  こうしてはいられないと焦ったミレーネは、侍女に着替えの手伝いを頼んで飾りの少ないドレスに着替え、母の部屋へと急いだ。  ちょうど宮廷医師が診察を終えて、流産の可能性があると沈痛な面持ちで語っているところに出くわした。  フレデリック王の顔からさっと血が引き青ざめるのが、ミレーネの目にもはっきり見てとれる。額を押さえて表情を隠したフレデリックが、苦悩を滲ませた声を発した。 「なんということだ。妃が懐妊していたというのか。何とか流産を食い止められないか」 「こればかりは、神の手に委ねるしかありません」 「神に祈り続けてようやくできた子だ。生まれもしないのに連れていくのを黙って見ていろと言うのか。誰か、医術に精通した魔術師を呼べ!」
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