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 王の怒声に従者が返事をして、勢いよく走りだす。医術師が到着するまでミレーネは、母フロリアが横たわるベッドの傍に用意された椅子に腰かけ、お腹を守るように丸まった母の背中を撫で続けた。 「神様、お願いです。どうか母の赤ちゃんを連れていかないで。助けてあげてください。もし無事に生まれたら、赤ちゃんを守れるように私も強くなるから、どうか願いをお聞き届けください」  母の背に触れた指先が熱を持った気がする。気のせいか荒かったフロリアの息遣いも、少し治まったように感じた。  もしかしたら、枯れてしまったと思っていた魔術の中に、使ったことのない治癒の魔術が生き残っていたのかもしれない。  ミレーネが母の背から離した指先をじっと見つめて考えていたとき、フレデリック王の侍従が戻ってきて、医術師が到着したことを告げた。  医術師が横たわったフロリア王妃に呪文を唱えながら手を翳す。目を閉じて容態を探っていた医術師が眉根を寄せた。 「確かに王妃さまの体内に命の光を感じられます。ただし、その命は今にも消えそうなほど弱っていて、呼び寄せようにも反応しません。超自然的な力が働いているのかもしれません。呪術ならば大魔術師に解いてもらわなければ、この赤子の命は数日と持たないでしょう」
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