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真っ青になって震えだしたミレーネを、父が心配そうに見つめる。ミレーネは倒れている場合じゃないと気力を振り絞って、父に告げた。
「お父さま。昨日メルシアから幸運のお守りをもらいました。有名な魔導士のものだそうで、その方がお守りに念術をかけ、受け取った人が願いを込めると夢が実現化すると聞きました。メルシアはお母さまに跡継ぎができるように願えば叶うと勧めていたのです」
「なんだと! そのお守りはどこだ? まさかフロリアはそれを使ったのか」
フレデリック王は驚愕に見開いた目を、ゆっくりとベッドの上のフロリア王妃に向けた。
「フロリア、ああ、どうかその得体の知れないものを使っていないと言ってくれ」
ベッドに横たわったフロリア王妃は、震える手を枕の下に入れ、しわの寄ったゆりかご型の紙を取り出した。
「あなた。これを……。申し訳ありません。国王陛下のお子をすでに身ごもっているとは知らず、ミレーネの未来のためにもというメルシアの甘言を受け入れてしまいました。でも、このお守りに害がないということを証明する魔術師たちのサインも添えられていたのです」
「その証明書には誰がサインしていた。実物はどこにある?」
ハリアーがナイトテーブルに置かれていた証明書を見つけ、王に差し出した。
「陛下、証明書には私のサインもあります。このお守り自体には邪念は感じられません。ただ危険な願いや黒魔術を帯びたものを弾くように、お守りと、念のために証明書にも術をかけました」
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