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 ミレーネは指先に感じた刺激を思い出した。あれはハリアー大魔術師がかけた術だった。  でも、どうして私を弾こうとしたのだろう。私は危ない願いもしていないし、黒魔術なんて知らない。  ミレーネの困惑は、父の怒りを含んだ声に遮断された。 「このお守りの効果とお前がかけた術が白魔術だというのなら、なぜ黒魔術が働き、妃の腹の中の命を奪おうとしているのだ。メルシアが関連しているというのなら、術を教えているお前も関与しているのではないのか」 「な、なにを申される。陛下、私をお疑いか。ミレーネ殿下のことも孫娘のように思って、一生懸命仕えて参りましたのに。もし、私が黒魔術で害を与えようとしていたならば、とっくの昔にミレーネさまは……、ああ、考えたくもない!」 「だが、ミレーネの能力は失われた。生まれながらに授かった魔力量は、身体の成長とともに増えて強くなることはあっても、減りはしないはず。これをどう説明する」  ハリアーはその場にガクッと膝をついた。ぎゅっと瞑った目と噛んだ唇が小刻みに震えている。小さく漏れた嗚咽の後、なんと嘆かわしいことだと呟いた。 「そこまでお疑いなら、私を処刑すればいい。それでミレーネさまの魔力量が戻るなら、この命を捧げることは本望です」
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