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ふっと笑い、エルドレッドがひどく静かに誘うような声で告げる。
「リリエン。気になるところはしっかり意見を言えよ。実際の女性に話を聞けるとより参考になるからな」
つまり感想を言えと?
更にハードルが上がった要望に、内心の焦りを押し殺しにっこり微笑んだ。
「わかりました」
「それでこそリリエンだ」
何の辱めだろうかと思いながらどうにかそう答えるが、エルドレッドは冗談でもなんでもなく言っているようだ。
――それでこそって、どんな印象なのかしら?
すっきりしないが、エルドレッドの期待のこもった眼差しに晒されると、初対面ですぐに追い出されたことを思えば進歩だとその期待に応えたくなるから不思議だ。
皇子の普段冷ややかな対応が微笑に変わるだけで言うことを聞きたくなるとか、「普段の塩対応な分ずるいよね」だとリリエンはこっそり呟いた。
流し見が終わると最初のページに戻り、一つひとつ丁寧に捲られていくそれにも真面目に向き合う。
恥ずかしさが過ぎると、今度は中身が気になってきた。
「へえ」
「いろいろあるな。それを図とともに説明しているのは確かに興味深い」
「そうですね。でも、やはり人によるとは思います」
女性がきゅんとくるポイントということらしいけれど、それぞれ好みはあるなと感じた。現にリリエン自身もまあいいかもと想像できるものもあれば、これは違うだろうと思うものもあった。
そもそも、好意がある前提じゃないと萌えない。きゅんとしない。
「確かにそうだな。女性もだが、男性も性格によって攻め方は変わってくるだろう」
確かにそうだ。胸中、しみじみとその意見に頷いた。
普段、慣れないことをするとぼろが出る。演じるのが楽しいならまだしも、無理をするのは精神的にもよくないだろう。
女性側からすれば内気な男性が急にぐいぐい押してきたらそれが魅力となる場合もあるだろうし、逆に嫌だと思う場合もあるだろう。
意外とエルドレッドも真剣に見てくれているので、リリエンも熱が入ってきた。
だが、後半になってくるとその描写が更に艶めかしくなり、動揺で落ち着かなくなる。
「リリエン、どうした?」
「いや、えっと」
初心者にはハードルが高すぎる。
そわそわと視線を彷徨わせいたたまれずエルドレッドから距離を取ろうと動くと、皇子は逃げかけたリリエンの腰を掴み、乱暴なほどの勢いで引き寄せた。
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