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「殿下……」
「リリエン。恥ずかしがることではない。そうだな。やはりこういうのは実践してみてこそだと思わないか?」
エルドレッドは思わず見蕩れるような笑みを刷いて、ぽん、とリリエンの頭を撫でた。
――頭、ぽん?
最初のほうにあったそれをさっそく実践され、リリエンは目を白黒させる。
「あっ……」
言葉にならない声を上げ、触れられた場所に手をやると、その手も掴まれて指を絡められた。
――これは三ページ目のやつ!?
大きな手に包まれ、ぴきりと絡まった。今更ながらに、爽やかな中に甘さが混じったエルドレッドの匂いを意識してしまう。
リリエンはぼっと顔を赤らめた。
「どうだ?」
「どうと言われましても」
いちいち近いです。
これも実践? それとも素?
腰に腕を回され密着している状態から顔を覗き込まれ、頬にエルドレッドの髪が触れる。
くすぐったくて、すごい速さで鳴る自分の心臓がどこどこ響いてうるさい。
「そうか。もっと試さないとわからないか」
そういうつもりの言葉じゃありませんが?
エルドレッドのほうを見ようにも近すぎて振り向けず、際どい絵が開けられたページに視線をやるしかできない。
そのほうがマシだった。
あの魅惑的な赤の双眸を見てしまったら、もしどこかに触れてしまったらと思うとどうしようもなく、リリエンはかちこちと固まる。
――あ、ダメだ。
くすり、と笑うだけで吐息がかかりぞくぞくする。
思わず身を震わせそうになったが、ここで反応すればエルドレッドの思惑通りとなりそうでぐっと堪えた。
「リリエン。何か言ってくれないと」
困っているのに、エルドレッドはさらに追い詰めてくる。
――くっ。鬼畜め。
艶っぽくも笑みを含む声音は、この状況を楽しんでいることがわかる。
普段、面倒くさがりなのに、いざ興が乗ればどこまでも楽しそうなのが悔しい。
余裕のあるエルドレッドに腹立たしくもあり、どうすることもできないもどかしさを抱えながら、リリエンはおずおずとエルドレッドのほうへと視線をやる。
「殿下、そんなつもりではなかったんです!」
「ほぉ? なら、どんなつもりだ?」
「純粋に殿下に女性に興味を持っていただこうと」
実践するつもりなんて微塵もなかったですけど?
そういうつもりで贈ったのではないのですけど?
「ああ。そうだろうな。でも、リリエンが始めたのだから最後まで責任は取らないとな」
エルドレッドは眩しそうに目を細めると、さらにリリエンを引き寄せ極上の笑みを浮かべた。
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