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「な、な、なっ」
「可愛らしい反応だな。リリエン。これからよろしくな」
ろくな反応が出来ずに声を上げていると、エルドレッドが凄絶な笑みを浮かべた。
そうして、この日から実技? を含む実践が毎日行われることになった。
今まで、ふらっと訪れきっかり一時間気楽に過ごしていたのが一変。
毎度、リリエンはよれよれになりながら部屋を出て行くことになり、それもまた、くしくもリリエンが考えていたエルドレッドの噂払拭に一役を買っていた。
本日も際どい接触を終え、リリエンはぜえぜえ息を吐きながら、エルドレッドを見上げた。
「こ、これで終わりですね。エルドレッド殿下、女性に興味を持っていただけましたでしょうか?」
「そうだな」
リリエンはよしっと内心ガッツポーズをした。
ここまでしておいて、女性に興味ないと言われた日には干からびてしまって涙も出なかったであろう。
だけど、頑張った甲斐があって、色よい返事を聞けた。
リリエンの頭の中でチャリンチャリンと金の音がなる。ついでに、黄金の鐘も鳴った。
大量の本と濃い中身に、贈った自分を呪いたいと何度思っただろうか。
だけど、領地を思い、切り詰めた生活を考えると引くに引けず、本日無事に目を通し実践という名の羞恥も乗り越えた。
「本当ですか?」
その成果がしっかりと表れたことがわかったのだ。
リリエンはぱあっと表情を明るくさせ、ほこほこと笑顔を浮かべた。
それを見たエルドレッドが、するりとリリエンの薄紫ピンクの髪を一房取り口づける。
「ああ。成果は出ているな。これもリリエンのおかげだ」
近い距離も熱っぽい視線も気にならない。
散々、エルドレッドに慣らされてきたリリエンは、これくらいの仕草や距離は不意打ちを食らわなければ受止められるようになっていた。
そうだろう、そうだろうと、リリエンは報われたことに終始ご機嫌で、こちらも機嫌の良いエルドレッドと話をし、その日は今までで一番実りのある楽しい時間を過ごした。
そして、言質とったぞとリリエンはその足で皇后に成果を報告し、報酬を受け取るとすたこらと領地へと帰るのだった。
次の日、エルドレッドの執務室。
「人を弄びやがって。覚悟しろ、リリエン。俺の興味を引いたんだ。最後まで責任を取ってもらおうか」
いつもの時間になっても現れないリリエンを探し、その話を聞いたエルドレッドの不敵な笑い声が響いたのだった。
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