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「……全く何もわかっていなかったんだな。俺を金のために弄びやがって」
「ご、誤解です。何てことを言うのですか!?」
「だってそうだろう? 自分から押しかけてきておいて挨拶もなしに帰るとは薄情だな」
「それはほかの令嬢だって同じじゃないですか」
殿下目当てで突撃してきた女性たちと何が違うのだろうか?
彼女たちは皆追い出されてしまったけれど、追い出された者と追い出されなかった者の違いというだけで、最初からリリエンは目的も告げていた。
「いいや。違うね。お前は金をもらえばそのままとんずらするつもりだっただろう?」
実際、そうしたしなと皮肉げに口の端を引き上げ、エルドレッドはずいっと顔を寄せてくる。
「と、とんずら。先ほどからお言葉がよろしくありません」
「とんずらじゃないというならば、俺のもとにいるのだな」
「そ、それは……」
話せば吐息が触れるほどの近さに、数日ぶりの息遣いに、無理矢理押し込めて忘れようと思っていたあれやこれやが一気に駆け巡った。
ぶわりと顔を赤くしたリリエンを、エルドレッドが咎めながらも熱のこもった眼差しで射る。
「責任を取れといっただろう?」
「実践に付き合ったじゃないですか?」
「あれはリリエンのための慣らしだ?」
――あれが?
唇が微かに触れ、少しでも動けばさらに触れてしまうと視線だけで訴えると、エルドレッドは見惚れるような笑みを刷いて、うっそりとささやいた。
「俺を惚れさせたんだ。最後まで責任持って俺と付き合ってくれるよな?」
告白に反応する前に、唇が重なる。
身体が浮きそうなほどぎゅっと抱きしめられ、背が仰け反った。
しばらく唇を触れ合わせていたがエルドレッドは顔を上げると、つま先立ちになったリリエンの目尻にキスを落とされた。
それから、頬や耳や、顔中に何度も軽く口づけられる。
「で、んか?」
キスを受けるたびに、好きだと言われているようで、むずむずする心を持て余したリリエンは、エルドレッドにされるがままキスを受け入れた。
「リリエン。好きだ」
告白も自信が溢れる力強いもので、生命力溢れた赤の双眸の美しさに見惚れていると、また形のいい唇が近づいてきた。
「もう一度、キスしてもいいか」
触れる寸前に問われる。
ここまで追いかけてきたことや、告白にぽおっとなったリリエンは小さく頷いた。
「んっ」
消極的な受諾に、エルドレッドは嬉しそうに口角を上げリリエンの唇を奪った。
何度かのキスの後、エルドレッドが手を絡ませながら訊ねてくる。
「さて、リリエン。責任持って一緒に帰るよな?」
「だから、そんなつもりではなかったんです!」
ついキスを受け入れてしまったし、告白も嬉しかったけれど……。
キスを受け入れるくらいだから異性として好きだとは思うが、それとこれとは別だ。
リリエンの心からの叫びが、ブリック家に木霊した。
三日後。王妃とタッグを組んだエルドレッドに再び連れ戻され、今度は攻守交代となり再びエルドレッドとの攻防戦が始まるのだった。
FIN.
短編なので今回はここまで。
過程も今後の攻防戦も楽しそうだなと妄想膨らむ二人です。
お付き合い、反応も含めてありがとうございました(*´∀人)♪
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