3.リリエンの主張

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 そんなある日、定位置のソファで親しくなった側近たちと歓談していると、離れた場所で一人座っていたエルドレッドに話しかけられた。 「お前はいつまでこんなことを続ける?」 「殿下がお話してくださるまでです」  女性に興味を持ってもらおうにも、話してくださらないなら本当のところどう思っているのか、どういう方が好みなのか、それとも本当に男色なのかわからない。  男性が好きならば無理強いするつもりはなく、リリエンはそう皇后に伝えて前金も返して諦めて領地に帰るつもりだ。 「俺は女はいらない」 「そんなのだから、男色の噂が出るのでは?」  いらないならいらないでいいけれど、一辺倒に主張するから誤解されるのだと言えばわずかに嫌そうに眉を寄せたので、その様子は噂の内容が不服であること物語っていた。  それを見て、噂はただの噂なのだとリリエンは確信した。  ただ、皇室でマイナスとなるような噂が出ること自体が駄目なのだ。  そのため、何とかしようと皇后は女性を何人も送ったけれど、ことごとく追い返されたため返ってその噂に拍車がかかってしまった。  だから、慌てて皇后も毛色の違ったリリエンに依頼することになったのだろう。  一度、女性がエルドレッドに色仕掛けで迫っている現場に遭遇したことがあった。  ぐいぐい迫っておきながら、その女性は何も言わずとも察してと縋るような熱い眼差しを向けていた。  かなりの押しにもエルドレッドの感情は揺れることはなかったようで、ひたすら肩を押して女性を遠ざけ素っ気なかった。ただ、その顔にはものすごく面倒だというのがありありと書かれていた。  それを見て、大変そうだと思うと同時に面倒なだけだったら、なんとかなる気がした。  ようは、面倒だと思われない方法を探せばいいのだ。無理矢理押し付けられるのを非常に嫌うので、さりげなくアプローチ。  幸い、部屋に入れてもらえるくらいにまでなっているので、その女性よりは何かできる可能性は高い。  最悪、女性に興味を示さなくても嫌だと思わせず、周囲には女性と過ごしている姿を見せることができれば、その噂は次第に薄れ皇后様も許してくれるのではないかと考えた。  決して前金が惜しいとかそういうことでは……、それも含まれているがリリエンも本人が本当に嫌がることはするつもりはなかった。  それは皇后にも伝えてあるので、この任務が失敗したからと言って報復があるとも考えていない。  だから、許された日はきっちり一時間、意地でも一緒にいるつもりだ。  部屋に入ってしまえば、側近や侍従以外は本当のところ何をしているかわからない。  もちろん、お金を受け取ったからにはこれは仕事だ。エルドレッドに女性に興味を持ってもらえるように頑張るつもりだ。  領地のためにも報奨金を受け取ったら、一年先、いや三年先まで贅沢はできずとも今までみたいにあれこれ費用を削って過ごすということはなくなる。  みんながハッピーな結末だ。  そのためにはどうすればいいかと、リリエンは真剣に考えた。  あれこれと思案し、きらりと閃いた作戦にふむふむと頷く。 「殿下も男性だし……、まったく欲がないわけではないわよね」  よしそれでいきましょうと、そのための準備をするために街にくりだした。  こうしてリリエンは、エルドレッドのもとに通い続けながらある物を貢ぎ続けたのだった。
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