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 ハリネズミは妖精の寂しそうな表情が忘れられなかった。 (妖精さん寂しそうだったな…僕にできる事した方が良いよね…それに、このまま針が戻らないのは絶対嫌だ!) 以前は飼い主がケージの扉を開けると、すぐさま物陰に隠れていた。 (もう、隠れないようにしよう!) ハリネズミは固く決意し、ケージ扉の前に佇んだ。 (さあ!来い。飼い主!) 程なくして飼い主がやって来て、ケージの扉を開けた。 「あら?今日は逃げないのね」 心なしか飼い主の声は嬉しそうだ。 (逃げちゃダメ…逃げちゃダメ…) ハリネズミは怖かったが、逃げずに飼い主を見上げた。 視力が弱い為、飼い主の顔は見えない。 「フフフ…可愛い。あ!おやつあげるわね」 飼い主は手の平におやつを乗せると、ハリネズミの顔の前に差し出した。 (あ!これは、僕が好きなやつ!) 今までは警戒して受け取らなかったおやつ。 ハリネズミは一瞬躊躇したが恐る恐る食べた。 「初めて手の平から食べたわ!」 飼い主が嬉しそうにニッコリと笑う。 ハリネズミは再び飼い主を見上げる。 (僕より凄く大きいけど…そんなに怖くないのかもしれない…) ほんの少しだけ警戒心が薄らいだハリネズミ。 (頑張って、もっと距離を縮めるぞ!) 飼い主を見上げながら意気込んだ。  それからハリネズミは頑張った。 飼い主がケージの扉を開けた時、寝ている時以外は進んで近寄った。 その度に飼い主は嬉しそうに笑った。 そんな生活を続けているうちに、ハリネズミの恐怖心が徐々に薄れ、飼い主が扉を開けるのを心待ちにするようになっていった。 「また、何か美味しいおやつくれるのかな?」 扉が開く度に、ハリネズミは駆け寄り期待の目で飼い主を見つめるようになった。
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