思惑はすれ違う

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家に帰る電車の中で、サキは考えていた。 トシアキは頭の切れる人だ。 だから普通の人よりも先が読める。 リーダーである自分がどう動くとプロジェクトにとって最適か、分かっている。 温かい気持ちの持ち主でも、人格者でもない。 正解が見えているから、そうなるように動いているだけ。 「みんな、本当の俺を誤解している」 とトシアキがよく言っているのは、そういうことなんだろう。 サキのスマホにトシアキからメールが届いた。 「最後までできなくて、満足させてあげられなくて、本当にごめんね」 (謝って欲しいのはそこじゃない)とサキは思った。 「のびちゃった麺に謝ってよ」 隣の人に聞こえないように、サキはつぶやいた。
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