02.「影の薄い生徒」

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02.「影の薄い生徒」

 祥平は昔から引っ込み思案。初対面の人と話すのはもちろん、小学校でも中学校でも同じクラスの同級生に話しかけることにも高いハードルを感じる。教室で同級生同士が気軽に会話しているところを見ると、その姿に羨ましささえ感じるし、疑問も抱く。  なぜ、他の人たちはあんなに気軽に会話できるのだろうと。  だから、祥平には友達が少ない。もちろん、この高校にも同じ中学から進学してきた生徒もいる。けれど、そこまで親しくはない。むしろ、向こうが祥平の存在を認識しているのかさえあやしい。  祥平はいわゆる「影の薄い生徒」だからだ。小学校でも中学校でも友達は少なかった。友達がまったくいないわけじゃない。やっぱり影の薄いもの同士がより集まったという感じだけど。その友達は別の高校に進学してしまった。  祥平は自分のそばで慶太と紗良が話し続ける中で、次の授業の準備を進める。準備が終わると、会話に割り込む方法なんて知らないまま、窓の外を眺めることくらいしかできない。授業でわからなかったところを誰か他の生徒に聞くこともできないまま。
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