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04.宇宙大戦争
オレンジ色に輝く宇宙船のハッチの向こうに姿を現したカージュメル星人たち。そのうちのひとりが宇宙船の外にゆっくりと進み出る。
ここはマンションのベランダ5階。それでも、そのカージュメル星人は空中に浮かんだまま、祥平にうやうやしく敬意を示す。マンション5階の高さで空中に広がる見えない床があって、そこに立っているみたいに。
「カージュメルに栄光を!」
祥平はカージュメル星方式の挨拶を宇宙船から降りてきた司令官と交わす。右手の指先を独特の形に結んで。そして祥平は司令官に不敵な笑みを浮かべる。
「王子と呼ばれてはいるものの王位からは遠いがな」
同じ上級士官学校に通った同級生の司令官も苦笑する。
「いいえ。なにをおっしゃいますか。傍系とはいえ王子は王子。この戦いで戦功を上げれば、王の覚えもめでたくなりますぞ」
「もともと血統で言えばこちらのほうが正統だからな……」
ベランダに立つ祥平がほくそ笑んでいると、背後から弟の悠平が祥平に大声で告げる。
「お兄ちゃん、風呂入んなよ。僕、上がったから」
悠平の言葉に現実に引き戻される祥平。目の前にはいつもの夜空、その下にはいつも変わらない夜の街並み。
「わかったよ」
祥平は自分がまた宇宙大戦争の想像をしていたことに気づく。
ベランダからリビングに戻り、サッシの鍵をしっかりとかけ、カーテンを閉めた祥平。着替えを取るために、兄弟の部屋に向かいながら自分にうんざりしてしまう。
もう自分は高校生になったんだから、宇宙大戦争の想像なんてしないと決めたはずなのに。自分がカージュメル星人の王子で、ウゴジンバや他の宇宙人と戦い、やがて王を目指すだなんて想像は中学生までに終わらせるって決めただろ?
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