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05.緑色の葉っぱを揺らす
授業を受けながら、祥平は別のことを考える。自分がカージュメル星の王家の人間で、ウゴジンバ星人との壮絶な戦いの末、王位を勝ち取る。宇宙大戦争を舞台にした、そんな想像が頭に満ちている。
「じゃあ、平岩。この整式の整理を説明してみなさい」
数学教師が祥平を指名した。祥平の頭からさっきまでの想像が吹き飛び、祥平は慌てて教科書やノートで答えを探る。
「次数が高い順に並べかえる」
隣の席に座る慶太が小声で祥平にささやいた。
「ええっとですね。次数が高い順に並べかえます」
そうだった。慶太の言葉で祥平は答えを思い出す。
教師がうなずく。続きも答えてと告げるように。祥平は教師が指し棒で示している黒板の整式を見つけ、答えを探す。
「だから、その整式の場合は、xの3乗、-2xの2乗、-2xy、+3yの2乗と並べかえます」
「よろしい、正解」
教師は満足したように黒板に向き直り、授業を続ける。
「ありがとう」
祥平は小声で隣の席の慶太に告げる。慶太は「どういたしまして」と表情と目を使って無言で伝える。それは輝くばかりの緑色の葉っぱを揺らす春先の風のような表情だった。
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