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 そう思ってからどれくらい経っただろうか。教室前方には一応、時計があるのだが、一瞬目を離した隙に数時間が経過していたり、逆にしばらく見ていなかったのに一秒も進んでいなかったりと、その時々によってでたらめだった。仕組みも意図もわからないが、時計という機能は持ち合わせていないただの飾りで。どれくらいの時間が経ったのかは、自分の感覚を信じるしかなかった。  体感的には、とても長い時間が経った。実際はそんなに経っていないのかもしれないけど、死体だと思っていた全員が目を覚ますまで、何時間も待った気がする。この異様な空間がそう感じさせたのかもしれない。  改めて、遠目から観察できた情報を整理しておこう。目覚めた彼らが取った行動も含めて。  一人目。女性。髪は肩に掛からないくらい。身長は小柄なヒナより少し高い。彼女は、僕と同じ高校の制服を着ていた。  僕の背後で無言で立ち上がった彼女は、ゆっくりと教室を見まわしたあと、隅の方へ歩いて行き、そこでひたすらじっとしていた。時折、視線を動かすが、何を考えているのかは終始わからなかった。ミステリアスな雰囲気を醸し出している。
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