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「徳本くんが部活の小道具をつくってくれて、それを運ぶ手伝いに。だから私は知ってたけど、まさか、あなたにもそんな思い出があったなんてね」  茉依さんが沼田くんを横目でにらんでいる。敵対心むき出しといった感じ。どうしてそうなってしまうのだろう。 「そんなににらまないでよ。お姉さん」  「お姉さん」? 「俺には徳本の家に遊びに来た思い出なんてない。場所だって知らなかった。だから、お姉さんのあとをつけてきたんだ」 「私のあとを?」 「徳本と話がしたかったんだよ。でも、徳本の家なんて知らないから、とりあえずお姉さんの家に行った。そっちはすずめに連れられて何度も行ったことあったからな。そしたらお姉さんが出かけていくのが見えて、ここまでついてきたってわけ」 「でも、どうして私の家に?」 「昨日、お姉さん言っただろ? 徳本が桐谷にノートをもらったとか何とかって。それって、二人が繋がってなきゃ出ない言葉だ。だから二人は手を組んでいると思った」 「ちょ、ちょっと待ってください」  一人だけ置いてけぼりの僕は、茉依さんと沼田くんの会話に割り込んだ。
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