すずめのいない教室

土

「何だよ、徳本。ノートのこと、そんなに意外か？　俺の他にも気づいてたヤツいたと思うけど」
「そうじゃなくて。『お姉さん』って、茉依さんのことですか？」
「そうだけど。話の流れでわからないか？」
「なんで『お姉さん』って。もしかして、芽依さんとつき合ってたんですか？」

　自分では変な質問をしたつもりなんてないけれど、茉依さんはキョトンとした目で僕を見つめているし、沼田くんは吹き出していた。そんなに笑うようなことかな？

「俺とすずめが？　ないない。ただの同級生だよ」
「じゃあ、どうして茉依さんのこと『お姉さん』って？」
「すずめがそう呼んでたから。別に深い意味なんてない」
「もし二人がつき合ってたのなら、さすがに私が気づいてる。芽依はそういうの隠すような子じゃないし、私たち同じ部屋で過ごしてたんだから」
「そうそう。だから安心しろ。って、今更そんなこと言われてももう遅いか」

　ただの同級生の姉を、「お姉さん」なんて呼ぶのか？　その「お姉さん」だって同級生なのに。二人は普通のことのように言うけど、僕にはいまいち理解できなかった。