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 彼はしばらく呆然としていたが、やがて異変に気づくと、頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。ずっと何かをつぶやいていた。近くにいたわけではなかったため、何を言っているのかはわからなかった。かろうじて聞こえてきたのは「呪いだ」、「殺される」という言葉だけ。彼の名前は『怖がりくん』に決まった。  三人目。女性。メガネをかけていて、長い黒髪を綺麗に一つに束ねていた。身長は、ヒナより高い。  冷静に周囲と自分の様子を観察した彼女は、立ち上がり、僕たちの方へ近寄って「外には出られないの?」と尋ねてきた。僕がうなずくと、彼女はまだ転がっている人たち一人一人のところへ行き、顔をのぞき込んだり、体を揺すってみたりしていた。だが、誰も目を覚ます様子はなかった。それを確認すると、彼女は「自然に目を覚ますまで待つしかないか」とだけつぶやいて近くの席に着き、もう何も言わなかった。  そんな彼女の冷静な行動が、僕にはまるでリーダーのように見えた。みんなを引っ張っていく姿が想像できた。ただ、リーダーという名前は何となく違うと思い、彼女のことは『学級委員長さん』と呼ぶことにした。
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