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「俺、知ってたんだよ。すずめの秘密」 「秘密って?」  思わず聞いてしまったけど、それは僕が足を踏み入れても良いようなことなのだろうか。沼田くんは僕の方をチラチラ見ながら、茉依さんの様子をうかがっている。 「良いのか? 徳本に話しても」 「どうして私に聞くの? あなたが芽依の何を知っているのか、私にはさっぱりわからないのに」 「一応。お姉さんだから」  意外と律儀な沼田くんに、茉依さんはため息を返す。 「徳本くんなら良いんじゃない? 知られて困るようなやましいこと、芽依にあるわけないし」  それを聞いた沼田くんは、一度のどを整えてから口を開いた。僕の方を向きながら、僕だけに話すように。 「すずめ、病気だったんだよ」 「病気?」  芽依さんが病気だった? そんな話、聞いてないんだけど。茉依さんの方を見たら、ばつが悪そうに目をそらされてしまった。 「それ、本当なんですか?」 「本当。ごめん、黙ってて」  ボソボソと話す茉依さんの言葉を、一音たりとも聞き逃すまいと、僕は耳に意識を集中させた。
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