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「その通り。きっと犯人にとって不都合なことが書かれていただろうから、徳本と一緒にこの世から消し去るつもりだったんだろう」 「となると、もう処分されてしまった可能性が高いから、探しても無駄」  無意識なのか、茉依さんと沼田くんが自然に会話をしている。良い感じだ。 「昨夜っていえば、桐谷さん、徳本くんが重大な事実を掴んだって言ってたけど」 「それが?」 「重大な事実って、何だったんだろう」  三人で頭をひねる。いくらひねっても、その重大な事実とやらが何か、わかるはずないんだけど。似たようなポーズで考えを巡らせてしまう。  あまり意味のないその無言を終わらせたのは、沼田くんだった。 「たとえば、誰かの発言の矛盾に気づいた、とか?」 「どうして?」 「徳本がやってたのは後輩への聞き込みだったんだろ? 今更『犯人を目撃した』なんて直接的な証言が出てくるとは思えないけど、たとえば『沼田 祐は、本当はそのとき美術室にいなかった』って証言があれば、俺は嘘を吐いていたことになる」 「つまり、徳本くんは誰かの嘘に気づいたってこと?」 「その可能性はあるだろ?」
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