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 「確かに」などと茉依さんがブツブツつぶやくのを、沼田くんは得意げに眺めている。僕はさらにその外側で、二人の様子を微笑ましく眺めていた。もちろん、話はちゃんと聞いている。 「行くしかないか」 「ああ」 「え、行くって?」 「國澤中学校」  國澤中。僕の通っていた中学校。夢の中で閉じ込められているあの國澤中。毎晩足を踏み入れているのに、いざ本物に行くとなると多少ドキドキしてしまう。もしかしたら、少しは記憶が戻るかもしれない。 「とりあえず、徳本が集めていた証言を全部集め直そう」 「それで成果がなかったときには、また別な方法を考えれば良い」 「わかりました」  今から行くこともできたけど、茉依さんは中途半端になってしまいそうだと言った。どうせやるなら、明日一日、朝から時間をかけて徹底的にやった方が良いと。僕も沼田くんも、その意見に賛成した。  だから、まだ早いけど、今日はひとまずお開きだ。 「徳本。いろいろ思うことがあるのはわかるけど、明日は調子整えておけよ」
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