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 そう言い残して、沼田くんは一人で帰っていった。茉依さんは、沼田くんと二人きりになるのが気まずかったのだろう。もう少しゆっくりしていくそうだ。 「國澤中学校の場所わかる? 明日、迎えに来ようか?」 「スマホの地図で調べながら行くので、大丈夫です。自転車で良いですよね?」 「うん。彼もきっとそうだと思う」  彼。沼田くんのことだ。二人きりになったから、気になったことをいろいろと聞いてみることにした。 「茉依さんは、沼田くんのことが嫌いなんですか?」 「そう見えた?」 「敵対心むき出しというか、なんかすごく攻撃的だなって」 「攻撃的か」  茉依さんは、僕の言葉を繰り返しながら何度かゆっくりとうなずいた。そして恥ずかしそうに笑みを浮かべる。 「確かにそうかもしれない。まさか、芽依の病気のこと知ってる人がいるなんて思ってなかったから、ちょっと動揺してたかも。特別とはいえ、さすがにそれは話してないと思ってたんだけどね」  やっぱり動揺していたんだ。そんなことを正直に話してくれるところ、ちょっとだけ茉依さんが愛らしく見えた。
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