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「そういえば、さっき沼田くんも言ってましたけど、『特別な友達』ってどういう意味なんですか?」  僕の問いに対して、茉依さんの「ああ、それはね」という優しい声が答える。 「芽依が心を許せる友達ってこと」 「心を許せる?」  今度は僕が茉依さんの言葉を繰り返した。そしてまた、茉依さんがうなずく。 「芽依は人気者だから、期待されることも多い。その期待に応えようと一生懸命になればなるほど、何でもできる完璧超人ってイメージが勝手にできあがっていって、それがまた芽依に無理をさせる」  茉依さんの話を聞きながら、人気者は人気者で大変なんだなーと、人気者とは程遠い僕は他人事のように思った。 「でも、芽依だってできないことはあるし、意外と弱いの」 「その弱さを見せられる友達が、特別な友達ってことですか?」 「そう。それがあの教室に集められている人たちってわけ」  僕たちは、他の同級生たちに比べて、かなり芽依さんに近い存在だったってことだ。となると、沼田くんだけじゃなくて、全員が芽依さんのいろいろなことを知っていたのかもしれない。そして、それをまだ胸の内に秘めている人がいるのかも。
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