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 茉依さんを見送ったあと、母さんがこっそり聞いてきた。部屋で号泣していたとき、その声が漏れ聞こえていたらしい。「本当はすぐにでも駆けつけたかったのだけど」なんて言いたそうな顔だが、きっと茉依さんと沼田くんが来ていたため気を遣ってくれたのだろう。友人同士の時間を邪魔しないように。 「大丈夫。ちょっと話してただけだから」 「そう? それなら良いけど。何かあったらすぐに言いなさいよ」  まだ表情は心配そうだが、僕の言葉を信じてそれ以上は追及してこなかった。今度は僕が聞く番だ。 「母さん、今日来た二人のこと知ってるの?」  茉依さんも沼田くんも、僕が玄関で出迎えたわけじゃない。母さんが迎え入れ、僕の部屋まで案内したのだ。  もし母さんが二人のことを知らず、「徳本 遼太朗の友達だ」という相手の言葉だけを鵜呑みにして家に招き入れたのだとしたら、ちょっと考えなければいけない。父さんも交えて家族会議をする必要だってあるかもしれない。 「中学のときのお友達でしょ? 確か、鈴木さんと沼田くんだっけ?」 「あ、知ってるんだ」
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