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 彼の名前はすぐに決まると思ったのだが、少し悩んだ。『少女マンガに出てくるイケメンくん』だと長すぎる。結局上手い言葉が見つからなかったため、彼は『主人公くん』とすることにした。少女マンガの主人公は多分少女だろうが、僕が判別できれば良いのだからと妥協した。身長は、僕より少し低かった。  主人公くんは目を覚ました瞬間から動揺していたが、JKさんを見つけてからはさらに動揺が増したように見えた。すぐにでもこの場から逃げ出したかったのか、一目散に扉を目指したが、もちろん開くはずはない。次に窓からの脱出を試みるも、結局、僕と同じ結果にたどり着いた。  しかし、ここからが違った。  主人公くんは近くにあった椅子を手に取り、窓ガラスに何度も何度も叩きつけた。僕が断念したことを何のためらいもなくやってのけたのだ。だが、窓ガラスはビクともしなかった。ヒビ一つ入っていないようだった。  やがて自分の行動が無意味だとわかると、主人公くんは乱暴に椅子を投げ捨てて、床に座り込んでしまった。JKさんには背中を向けていた。  六人目。最後の一人。男性。身長は僕より低く、メガネをかけていた。
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