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 よく考えれば、中学を卒業して引っ越したヒナが毎日お見舞いに来られるはずはないし、第一、ヒナは僕が事故に遭った翌日に亡くなっている。ヒナには不可能だって、どうして気づかなかったんだろう。今夜会ったときにでも、茉依さんにお礼言わないと。 「でも、中学のときのお友達が来てくれるなんて、その、なんていうか」 「心配なんでしょ?」  母さんの顔が曇る。きっと、芽依さんのことを知ったらショックを受けるんじゃないかって思ってるんだ。 「大丈夫。ちゃんと乗り越えられるから。心強い友達もいるしね」 「素敵なお友達がいて良かったわね」  これ以上心配をかけるわけにはいかない。早く犯人を見つけて、記憶も取り戻す。母さんの微笑みを見て、これで何度目かわからない覚悟を決めた。
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