3/18
前へ
/178ページ
次へ
 小楠さんの目の下には濃いクマができていて、すごく疲れた顔をしていて、最初の夜に感じた「ザ・JK」の雰囲気はどこかへ忘れてきてしまったみたいだった。そこに鬼のような目が鋭く光っているのだから、飄々としているヒナが信じられない。 「言いたいことあるなら言えば?」  こんな状況で口を開けるのはヒナだけだった。小楠さんを真っ直ぐ見ながら、何気ない日常の一コマのようにつづける。 「何時間も見つめられて、そろそろ疲れちゃったよ。みんなも起きたことだし、情報は共有しておいた方が良いんじゃない? 自分が疑われないためにも」  挑発的な言葉。また小楠さんが何か投げるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、小楠さんはその場でカタカタと震えるだけだった。 「あんた、何がしたいの?」  声も震えている。鋭い視線とは対照的に、小楠さんの心の中は恐怖で支配されているのかもしれなかった。  二日間も眠れなかったくらいだ。この教室に何かトラウマ的なものがあるのか、あるいは僕たちと顔を合わせるわけにはいかない後ろめたいことでもあったのか。何にせよ、小楠さんが何かを抱えていることは、誰の目にも明らかだった。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加