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 渡瀬くんの低い声が響いた。ヒナは声を出そうとしていたけど、渡瀬くんの言葉があまりにも衝撃だったのか、口をパクパクとさせることしかできていなかった。 「犯人を見つけたいけど、自分だけじゃどうにもならない。だからすずめを言い訳に使ってるんだろ? 『すずめのため』って言えば、みんな簡単に力を貸してくれるから。ごまかしてないでハッキリ言えよ」  ヒナと目が合った。その表情は、一体どんな感情を表しているの? ただただ胸を締めつけられるだけで、何もできない自分がもどかしい。  ヒナは一度鼻をすすった。 「そうだよ。すずめちゃんなんてどうだって良い。全部私のため」  やけになったような言い方。もうどうでも良いと諦めてしまったような言い方。みんなを突き放して、ひとりぼっちになろうとしているかのような言い方。  ギュッと握った拳が小刻みに震えていた。ヒナだって、追い詰められている。いや、ヒナが一番思い詰めているに決まっている。
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