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 空気に耐えかねたのか、不甲斐ない僕を見かねたのかはわからないが、ヒナが自ら語り始めた。情けない僕は、ヒナの背中に伸ばしかけたままになっていた腕を引っ込めて、ただひたすらに聞いていることしかできなかった。 「すずめちゃんが死んじゃったとき、もちろんショックだった。でも、ちょっとだけホッとしちゃったの」  そこで一度区切ると、ヒナは顔をこすりながら振り向いた。真っ赤な目が、僕の目を捉えて離さない。 「私、リョウくんのことが好きだった」 「僕も好きだよっ」  まるで僕はヒナを好きじゃないみたいな言い方に、思わず声が出てしまった。ヒナは、僕にとっても大好きな友達だ。それは、何があっても揺るがない。 「私の好きと、リョウくんの好きは違う。私は、男の子として、リョウくんが好きだった。子どもの頃からずーっとね」  突然の告白。ヒナは「知らなかったでしょ」と、口角を無理矢理上げながらまた涙をこぼした。  驚いた。少なくとも今の僕は、ヒナがそんな風に想ってくれていたなんてちっとも気づいていなかったから。きっと、記憶の失われている中学時代の僕も知らなかったんじゃないかと、直感的に思う。
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