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 ヒナは背中に置かれていた僕の腕を払い捨てながら振り向き、怒鳴るように言った。のどにダメージを負ってしまいそうな勢い。相変わらず、目は痛々しいほどに真っ赤だ。  いっそのこと僕を完全に拒絶してしまえば良いのに。決して言葉にはしないが、僕の記憶に言及したことを悪いと思っているのが、顔を見ればハッキリとわかった。セリフと表情が合っていない。  完全には悪になりきれない。それこそまさに、僕の知っている優しいヒナだ。 「確かに、中学生のヒナを僕は知らない。三年間で何があったのかもわからない。でも、絶対に思い出す。そして、それがどんな記憶だったとしても、ヒナは優しいって僕は信じる。絶対にだ」  僕が言い終わると同時に、ヒナは顔を両手で覆いながらその場にうずくまってしまった。驚いて僕も視線を低く合わせようとしたが、ヒナはそれを制止した。 「やめて。お願いだから、そんなに優しくしないで」  絞り出すような声。今までで一番苦しそうな声。
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