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 そう思うなら、僕はこの音楽室から今すぐにでも出て行くべきなのだろうけど。それではヒナを見捨てているような感じがして、それこそヒナを傷つけるんじゃないかと思ってしまって、実行できない。  僕はどうすれば良いのか。生きている限り、きっと正解なんてないんだ。  涙を流しながら石になった僕と、僕の目の前ですべてを吐き出すように泣きじゃくっているヒナ。どうしてこんなことになってしまったのだろう。一体いつ、何を間違えたのだろう。  僕は、考えても意味のないことばかりを考えていた。失われた期間にいくら想いを馳せたって、何もわかるわけないのに。 「リョウくん、そろそろ教室に戻って」  視線の合わないヒナの言葉で、僕は無意味な思考を止めた。 「ヒナも一緒に戻ろう? 落ち着くまで待ってるよ」  それが最善だとは思っていない。でも、僕は少しでもヒナの側にいたかった。それが結果的にヒナを苦しめることになったとしても、一人残していくことなんてできない。 「私は一人で平気。それに、そろそろ朝かもしれない。こんなところで寝ちゃったら、運ぶの大変だよ」
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