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「だったらヒナも。こんなところで寝ちゃったら危ないよ」 「大丈夫。向こう側に居場所のない私は眠らないから」  今までのは寝たふりだったということか。そんなことを知ったからって、ヒナを置いていく理由にはならないけど。 「私たちはもう存在する世界が違うの。だから、私のことはほっといて!」  語尾が強調された言い方。本当にそれをヒナが望んでいるというのなら、僕は従うべきなのか。 「早く!」  急かされるように、僕の足は扉の方へと向かっていた。ヒナに背を向けて歩いている。  本当にこれで良いのか。頭ではまだ結論が出ていないのに、体はどんどんヒナから遠ざかっていった。 ***  音楽室を出ると、そこには壁に寄りかかった茉依さんがいた。僕が扉を閉めたのを確認してから、口を開く。 「ごめん。立ち聞きするつもりはなかったんだけど」  茉依さんはそれ以上何も言わずに、教室への道を戻り始めた。僕もそれにつづいて、ゆっくりと暗い廊下を歩く。
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