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「ここにいる全員、中学時代の同級生なんですか?」  学級委員長さんが黙ってうなずく。だとしたら。 「中学時代、何かあったんですか? 『すずめちゃん』って誰ですか?」  これには反応してくれなかった。というより、うつむいて、答えるのをためらっているようだった。それは学級委員長さんに限らず、教室内の全員に共通していた。  確信した。学級委員長さんとヒナが口にした『すずめちゃん』という言葉。全員が語るのをためらっているその人物が、鍵を握っているのは間違いない。一体何者なのだろう。ここにはいない同級生とか? 「どっちにしろ、朝になれば教師や生徒が登校してくる。ここは中学校で、明日は平日なんだから。わざわざ掘り返す必要はないだろ」  猫背くんの言う通りだった。朝になれば誰か来る。そうすれば、僕たちは無事に脱出することができるのだ。『すずめちゃん』が何者かわからなくても、あと数時間だけ待てば良い。ここにいるみんなが語りたくない記憶を、無理に引きずり出す必要なんてない。  教室内の空気がほんの少しだけ軽くなった気がした。終わりが見えないと思っていた暗闇に光が差したのだから、当然だ。
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