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「それはどうかな」  再び空気を重くしたのは、魔女さんだった。 「確かに、朝になれば誰かが助けに来てくれるかもしれない。本当にここが國澤中学校ならね」 「どういう意味?」 「じゃあ逆に聞くけど、外から見ることができないのに、どうしてここが國澤中学校だと断言できるの?」  その問いには、ヒナが教室後方の掲示を指しながら答えた。 「あれ、私たちが卒業する前につくったやつなの。だから、ここは國澤中三年一組の教室で間違いない」 「それがおかしいって言ってるの」  魔女さんはそこで言葉を止め、一通り僕たちの顔を見まわした。そして「誰もわからないの?」とつぶやく。 「今はもう六月の半ば」 「そうか」  学級委員長さんが声を上げた。何かに気づいたようだ。 「今この教室は、私たちの一学年下の後輩たちが使っている。もちろん、教室は後輩仕様になっているはず。つまり、私たちが卒業した三月時点の掲示がそのまま残っているなんてありえない」  言われてみればその通りだ。魔女さんが補足する。
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