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「今日は平日。今ある掲示を全部剥がして三月時点を再現するなんて、とても現実的とは思えない。それに、誘拐監禁までしておいて、たった一晩で解放されてしまうような場所を選ぶのも不自然。だったらここは何? 忠実に教室を再現した別の場所? 少なくとも、國澤中学校ではない可能性が高いと私は思う。そうだとすれば、教室から出られないようにされていることも、外が真っ暗で何も見えないことも納得できる」 「どういうことですか?」 「再現できたのは三年一組の教室だけで、一歩でも外に出れば、國澤中学校ではないとバレてしまうってこと」  魔女さんは頭の回転が早いらしい。自分が目覚めてから最後の一人が気がつくまでの時間で、この場所が國澤中を模してつくられた別の場所だという推論を完成させたのだ。しかも、誰も反論することができない。 「ついでに言うと、犯人の中には当時三年一組だった誰かが含まれていると思う」  空気がピリつくのを感じた。 「それは、私たちのことを疑っているということ?」  代表して、学級委員長さんが発言した。不自然なくらいに丁寧で、明らかな動揺や怒りが込められていた。
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