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 自分の部屋で眠っていたはずの僕が、何故見知らぬ教室にいるのか。もう少し観察してみようと思い、体を起こしたところで気づいた。僕は制服を着ている。しかも、僕が通っている高校の冬服だ。パンフレットで見たことがあるから間違いない。  でも、何故冬服なんだ? 仮に誰かに着替えさせられたのだとしても、もうとっくに衣替えは終わっている。今日――正確な時間がわからないからもう昨日かもしれないけど――、僕は夏服を着て登校した。この冬服を着た記憶なんて、一度もない。  わからないことだらけだけど、まずはこの教室から脱出するのが先だ。考えるのは、安全な場所にたどり着いてからいくらでもできる。  僕は立ち上がり、暗闇の教室を手探りで進んだ。目が慣れたといっても、すべてが完全に見えているわけではない。扉に手が触れるまで、何度か何かにぶつかった。  扉は開かなかった。教室の前後どちらも調べたが、どちらも開かなかった。鍵がかかっているのか、あるいは、外側にストッパーか何かが取りつけられているのか。どちらにせよ、扉から出ることはできなかった。
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