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 だから、ヒナの連絡先は僕のスマホには入っていない。家の場所も正確には覚えていないし、家の固定電話の番号だってわからない。つまり、ヒナと連絡を取ることはできないのだ。  夢の中でヒナが着ていた制服を頼りに高校まで行けば、会うことができるかもしれないけど。仮に夢の中の制服が正しかったとしても、それがどこの高校なのか、僕にはわからなかった。  そうだ、夢の中といえば。僕と同じ高校の制服を着ている人がいた。魔女さんだ。魔女さんが本当に僕と同じ高校の生徒なら、捜せば今日のうちに会って話を聞くことができるかもしれない。  そうと決まれば、ダラダラしている時間はもったいない。さっさと学校に行こう。僕は急いで準備をし、家を飛び出した。 ***  県立梅嵜(うめさき)高等学校。それが僕の通っている高校だ。資料によれば、文武両道の進学校なのだという。事故のあと登校したのは昨日が初めてだった。  正確にいうと、僕は中学入学以降の記憶を失っている。つまり、高校での日々もまったく覚えていない。事故に遭ったのは四月末だったため、通っていたのはわずか一ヵ月程度。それでも、失ったものは大きかった。
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