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 一学年三二〇人の計八クラス。その中からいるかどうかわからない魔女さんを探し出さなければならない。僕のクラスにはいなかったと思うから、あと七クラス二八〇人。とにかく歩きまわってみるしかないか。ため息が出た。頑張ろう。  と思っていたのだが、魔女さんはすぐに見つかった。三つ隣の教室にいた。一人で本を読んでいる。まだ朝早かったため、教室の中はまばらに人がいるだけだった。 「よし」  覚悟を決めて教室に足を踏み入れる。目の前まで行くと、魔女さんはゆっくりと顔を上げた。少しだけ驚いているようだった。 「僕のこと、知ってますか?」  魔女さんは僕を真っ直ぐに見つめている。僕も真っ直ぐな想いで魔女さんを見つめ返した。 「徳本 遼太朗(りょうたろう)。県立梅嵜高校の一年生。國澤中学校出身で、中学時代は演劇部に所属していた。今年四月に事故に遭い、一時意識不明の状態だった。現在は復帰したものの、記憶の一部を失っている。まだ必要?」 「もう十分です」  魔女さんは僕のことをよく知っていた。中学時代のクラスメイトというのは間違いないらしい。あの夢の情報は正しかったというわけだ。
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