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「それで、何?」  魔女さんは冷たかった。 「『すずめ』さんのことを聞きたくて」  冷たい魔女さんの表情が変わった。柔らかくなったのではない。さらに冷たさが増したのだ。目の前にいる僕が凍えてしまいそうなくらいに。 「どうして?」 「夢を見たんです。中学校の教室にクラスメイトだったと思われる人たちがいて、話してたら『すずめ』って名前が出てきて」  言っている途中でしまった、と思った。夢で見たなんて、そんなこと信じてもらえるだろうか。「本気で言っているの?」とか言われてしまいそうだ。 「そこに私がいた?」 「はい」 「そして、この学校の制服、冬服を着ていた?」 「どうしてわかるんですか?」 「それで、捜せば私が見つかるかもしれないと思った?」  魔女さんの言うことが当たりすぎていて、少し怖くなった。何も言えなかった。ただの夢だと思っていたけど、もしかしてあれは現実にあったことなのだろうか。魔女さんがあの状況を言い当てることができているのは、実際に経験しているから? 本当に、僕の中で眠っている記憶が何かを伝えようとしているのかも。 「本当に知りたい?」
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